「病院総合医委員会企画 地域で診る誤嚥性肺炎」
市立奈良病院 総合診療科 森川 暢
専門医部会若手医師部門の若手医病院総合医チームの大浦先生、崎山先生、官澤先生と一緒に誤嚥性肺炎の勉強会を開催しました。
① サルコペニア/フレイル
崎山先生からサルコペニア/フレイルと誤嚥性肺炎の関連についてお話を頂きました。
最新の、フレイルとサルコペニアに関する論文のレビューに加えて、誤嚥性肺炎との関連などをお話ししていただきました。
グループディスカッションでは外来でこのようなフレイルやサルコペニアにどのように介入すべきか話し合いました。
官澤先生には最新の誤嚥性肺炎のレビューに基づき、誤嚥性肺炎の診断や抗菌薬治療を中心にお話を頂きました。
特に抗菌薬治療ではセッティングや重症度に基づいた分類を話していただきました。
その中でもOHATを用いた医科歯科連携の在り方や、サクサクテストを用いた咀嚼機能評価について解説し実演していただきました。
また食事を開始する上でのポジショニングやフードテストの重要性についてもお話しし、実際にフードテストも参加者にやっていただきました。
そして、最後に大浦先生に誤嚥性肺炎のアドバンスケアプランニングについて、実際の症例をもとにどのように考えるかを話していただきました。
4分割表を用いた臨床倫理的アプローチ、多職種協働、さらには家族志向のケアを駆使した誤嚥性肺炎へのアプローチについてお話頂きました。
アンケートからも比較的満足度は高そうな印象で、ニーズはあるように感じました。
今後も、プライマリ・ケア連合学会の病院総合医委員会は情報発信をしていきたいと考えています。
「あなたの勉強方法は?生涯学習をupdateしよう!」報告
洛和会丸太町病院 救急総合診療科 長野 広之
我々、若手医師部門 病院総合医チームは
「あなたの勉強方法は?生涯学習をupdateしよう!」を開催し、18名に参加していただいた。
3時間の枠をいただき
① 医学知識アップデート(明石医療センター 官澤先生)
② 学習し続けるためのモチベーション理論(筑波大学附属病院 稲葉先生、 今村総合病院 崎山先生)
③ 勉強会も生涯学習の1つ(福島県立医科大学 會田先生)
の3部構成で生涯学習について学んだ。
① 医学知識アップデート
情報量が増え続ける昨今、どのように情報をUpdateしていくかを学んだ。情報ツールには「Hunting」と「Foraging」がある。Huntingは自分の必要な情報を取りに行くツール(Up to date, Dynamedなど)、Foragingはあまたある情報の中から最新のものやトピックのエビデンスが何もしなくても流れてくるようなもの(PubmedのRSS、ACP jounal clubやEvidencealertなど)である。皆の勉強法を話し合い、HuntingとForagingに分類し共有した。
議論の中では
・定期購読の本は徐々に読まなくなる
・オンラインで日々の診療の疑問を調べることを繰り返す。
・定期的な知識のアップデート、ノルマを設定する。
・グループ学習:MKSAP、EBM勉強会などで学んでいる
などの意見が出た。
また世代が変わるに連れて(初期研修医→後期研修医→指導医・専門医)、自分の勉強法がどう変わっていったかを議論した。学年が上になるに連れて、教えることで学ぶ・若手に教わることが多くなるという意見が出た。
最後に洛和会丸太町病院 上田剛士先生、栃木医療センター 矢吹拓先生、やわらぎクリニック 北和也先生、天理よろづ相談所病院 石丸裕康先生、獨協医科大学 志水太郎先生、市立福知山市民病院 川島篤志先生、亀井内科 亀井三博先生に事前に自身の勉強法を教えていただいていたものを共有した。
② 学習し続けるためのモチベーション理論
生涯を通じて学習し続けるにはモチベーションが不可欠である。前半は自分のモチベーションがどこから来ているのかを分析し、内発的モチベーション、外発的モチベーションのどちらの要素が大きいかを議論した。内発的モチベーションとは「この分野を学ぶことが楽しい」といった自分の内的から生まれるモチベーションで、外発的モチベーションは「給料が上がるから専門医を取ろう」といったものである。自分のモチベーションの志向を知ることで、モチベーションを自己調整することにつながる。
後半は他者のモチベーションを上げるために、どのような理論があるのか勉強した。かなり難しい内容ではあったが、参加者のモチベーションが高かったのも幸いし、活発な議論が行われた。
③ 勉強会も生涯学習の1つ
グループ学習のメリット、デメリットを学びながら、今までためになった・だめだった勉強会について話し合った。
グループ学習のメリットには
・仲間からPositiveな影響を受ける
・完成度の高いProductを作ることができる
・教えることで学習を強化できる
などが挙げられた。デメリットとしては個人的な行動でグループの機能が停止するなどが挙げられる。後半ではSNSのGroup学習などについてもレクチャーを行った。
アンケートの結果をみても、概ね参加者には満足いただけたようであり、自由記載では
・同じ年代なのでもっと自分も頑張らないととモチベーションアップになりました。
・学習方法、理論がわかりやすかったです。
・ディスカッションの場と講義がバランスよく、学びが実りよいものとなりました。
などのご意見をいただいた。
生涯学習は奥深いテーマであり、今回議論したもの以外にも教育やマネージメントなど幅広い内容を含む。今後も病院総合医チームで深めていきたいテーマである。病院総合医チームは「病院総合医(病院での総合診療)の価値を社会に発信し、これを志す若手の道標となる」をMission&Visionに今後もこのような勉強会などの活動を続けていこうと思う。
全国の病院総合医集まれ!本音で語り合うワールドカフェ3rd 報告書
洛和会丸太町病院 救急総合診療科 長野広之
我々若手医師部門 病院総合医チームは2018年2月10日 若手医師のための家庭医療学冬期セミナーにおいて、上記のワールドカフェを開催したため、これを報告する。当日は病院総合医チームスタッフを含めて18名が参加し、下記のテーマに沿い議論を行った。テーマについては事前にチームメンバーで案を出し、6つに絞り込んだ。
A「うまくいく病院総合医とそうでない人はどう違う?」
B「総合医と専門医が好きでたまらなくなるにはどうしたらよいのか」
C「病院総合医って病院の役に立っていますか?」
D「働いていて一番楽しい瞬間は?」
E「なぜ今の職場にいるのか?」
F「成長するために自分一人でできることは何か」
各々のテーマで出た意見を下記にまとめる。
A「うまくいく病院総合医とそうでない人はどう違う?」
- 他の医師をあまり批判しない(注意する場合は方法などに気を配る)。
- コミュニケーション能力が大事。
- こだわりが強すぎる・まじめすぎると上手くいかないことが多い(寛容性が大事)。
- 「うちじゃない」を言わない。
- 主役が他科の場合も上手く支え、患者にとっての最善を考える。縁の下の力持ち。
- Biomedical(疾病)のみにfocusせず、患者背景等にも気を配る(BPSモデル)。
- 与えられた環境でうまくやれるかどうか。
- Specialistからありがとうと言ってもらえる環境は大事。
B「総合医と専門医が好きでたまらなくなるにはどうしたらよいのか」
- 総合医は専門医のアイデンティティを脅かす存在となることもある。
- 専門医は「手に職」を持つことで医師としてやっている。
- それを持たない総合医が存在してしまうと自分の存在意義が脅かされる。
- 相手が総合医を知らないことが嫌われる原因。
- 総合医をすきになってもらうのではなく人として自分を好きになってもらう。
C「病院総合医って病院の役に立っていますか?」
- 領域別専門医の隙間を埋める。専門医が専門医らしく働けるように。
- 専門医不在の領域を埋める。
- どの科?の患者さんを診る
- 学生、研修医の教育をする。
- カンファレンスの司会 など。
また役に立ってる?の問いには
・他の診療科にとって
・病院にとって(コ・メディカル含む)
・患者・家族にとって
など実は色々な意味が含まれているとの意見が出た。
D「働いていて一番楽しい瞬間は?」
- 退院した人を在宅にみにいった時。
- 新しいことができるようになった時。できる手技が増えた時。
- ERの終わった瞬間、仲間と一緒にやっていて困難を乗り越えた時。
- 病院で末期の人をお風呂にいれることができ家族が嬉しがっていた時。
- 在宅はドラマティックなことが多い、やりがいを感じることが多い。
病棟に在宅の要素を持ち込めないか。
- 在宅をやると、どう通院するか...など視野が広がる。視野が広がるのが楽しい。
- 在宅はソロだが、病棟ではチーム、若手から元気をもらう。
- 外来がインフルエンザだらけの中できちんと違うものをみつけた時。
- 高齢者で訴えが難しい中見つけられたとき。
- 専攻医になると主治医で診れる、責任感がもてる。
- 地域連携の人にカンファレンスに読んでもらえた。
- 入院から退院、その後まで見られた。
E「なぜ今の職場にいるのか?」
- 医局人事から抜けた結果
- 医局の人事異動。
- 家庭医になるために必要だから。
F「成長するために自分一人でできることは何か」
- 看護師向けの勉強会を行い、疑問に答え続ける。
- 地域の人向けの勉強会を行う。
- そもそも自分1人では限界がある。
- Webで仲間とつながり勉強する
- 雑誌を読む、原稿をかく。
- PCLS(プライマリ・ケアレクチャーシリーズ)を院内で行う。
以上のような多くの意見が参加者から得られた。このワールドカフェでは対話することで各々の悩みの共有だけではなく、すでに病院総合医として働いている医師の働き方や考え方、今後のビジョンを共有できる貴重な場だと感じた。今後もこのような病院総合医が対話できる場を学会内に作っていければ、と考えた。